2020 年 3 月 6 日 (金)
筑波大学発ベンチャー企業である ソフトイーサ株式会社 (本店所在地 茨城県つくば市、以下「ソフトイーサ」といいます) は、新型コロナウイルス感染防止を目的に日々在宅勤務されている方々を対象として、これまで学術実験目的で試験構築してきた NTT 東日本フレッツ用 PPPoE 方式のインターネットアクセスポイント (東京・茨城) を、本日より新型コロナウイルス対策が必要な当面の期間 (以下「コロナ期間」といいます)、無償・無保証で開放いたします。テレワークで自宅のフレッツ回線をご利用の方で、テレワークの増加により普段お使いの ISP の PPPoE 通信の一時的な混雑等が原因で、業務上重要な通信が日中快適に行えない場合は、本アクセスポイントを試してみてください。
本 PPPoE アクセスポイントは、インターネット通信が利用可能ですが、業務上重要な通信プロトコル (シンクライアント通信、テレビ会議、メッセンジャーおよびメール送受信など) の速度 (帯域・遅延) をできるだけ高速化し、それ以外の、楽しみを目的とした不要不急の通信 (動画サイトの閲覧など) の優先順位を下げる特殊な処理を実験的に適用しています。これにより、コロナ期間中のテレワークに必要な重要な通信が比較的スムーズに行える可能性があります。
図 1: PPPoE ID: open@open.ad.jp パスワード: open で PPPoE 接続を行なう画面イメージ
開放期間:
- 2020 年 3 月 6 日 (金) から 新型コロナウイルス対策が必要な当面の期間
(なお、その後も、実験で必要な場合は、しばらくの間継続実施したいと考えています)
※ 恒久的に終了する場合は、本ページでアナウンスをいたします。
※ 下記の注意事項もお読みください。
対応回線:
NTT 東日本の「フレッツ光」で PPPoE に対応したすべてのサービスタイプ (東京都および茨城県エリアに限ります)
※ 「ドコモ光」等の NTT 東日本のフレッツ光サービスを利用する各社のコラボレーション回線からも利用可能です。
本日開放された共通アカウント 1 (通常の日本の IP アドレス):
- PPPoE ユーザー名: open@open.ad.jp
- PPPoE パスワード: open
※ ユーザー登録不要。open.ad.jp はソフトイーサが参加している学術実験ネットワークを示すドメインです。
本日開放された共通アカウント 2 (アメリカの IP アドレス経由で接続される):
- PPPoE ユーザー名: america@open.ad.jp
- PPPoE パスワード: open
※ この america ユーザー名でフレッツ PPPoE 接続を行なうと、実験として、米国の IP アドレスからインターネットに出ることになります。地域判定で米国となるため、日本限定の動画サイトのコンテンツの閲覧ができなくなり、結果として、在宅勤務が捗ることがあります。
本実験で解決したい課題
コロナ期間中は、首都圏を中心として在宅勤務者数が著しく増加します。すなわち、このような在宅からの通信が、コロナ期間中は、特に、日本社会を支える重要な役目を果たしている状態となります。そのための業務上重要な通信 (シンクライアント通信、テレビ会議、メッセンジャーおよびメール送受信など) は、高帯域・低遅延で行なわれる必要があります。
ところが、昼間の時間帯には、従前より、多くの方々が自宅等で必ずしも重要でない消費者的な通信 (動画サイトの閲覧、巨大なファイルのダウンロードなど) を一般的な ISP を用いて多量に行なっている場合があり、その場合、ISP の PPPoE アクセスポイントは大変混雑します。このように、従来は、在宅勤務のための重要な通信に遅延が発生したり、帯域が圧迫されたりする現象が発生していました。
この問題を解決するためには、必ずしも重要でない通信と、業務上重要な通信とを自動的に判別して、重要な通信を優先して取り扱う技術解決が必要です。ところが、近年、通信内容は一般的に SSL (TLS) で暗号化されており、プロトコルの種類は判別できません。また、仮に暗号化されていない場合でも、ISP がその内容をもとにプロトコルの種類を判別することは様々な事情から困難な場合がありました。
本実験の仕組み
本実験は、今回のコロナ期間のように、在宅勤務者が増加し重要な通信が一時的に急増したときに、通信を優先して取り扱うことができる仕組みを研究するための実験を目的するものです。本実験で開放するアクセスポイントでは、上記の問題を解決するために、実験的なトラフィック制御技術を利用します。
本実験では、在宅勤務でひんぱんに用いられる、業務上重要な通信プロトコル (シンクライアント通信、テレビ会議、メッセンジャーおよびメール送受信など) をできるだけ優先して NTT 東日本の NGN 網 (フレッツ光のバックボーン・ネットワーク) に注入します。この際、通信内容ではなく、パケットのサイズなどのトラフィックパターンを元に、優先度をできるだけ最適に判断できるようにすることを目指した仕組みを実装していきます。
この各種の仕組みがうまく作用するかどうかは、実験を継続し、試行錯誤をして、結果をみなければ分かりませんが、仮にこの試験技術が有効に作用した場合は、本アクセスポイントに多数の PPPoE 利用者が接続しても、業務上重要な通信プロトコル (シンクライアント通信、テレビ会議、メッセンジャーおよびメール送受信など) の速度が大幅に低下することなく、快適に利用できる結果が得られる可能性があります。
本実験のインフラ
- 本実験のための PPPoE アクセスポイントは、NTT 東日本の「フレッツ網」に、東京都および茨城県の 2 箇所で接続されています。
- 東京エリアでは、ソフトイーサが参加している学術実験ネットワーク (OPEN プロジェクト) によって、23 区内の 5 箇所の NTT 東日本の電話局を中心に独自に構築した東京 23 区内光ファイバ 40Gbps イーサネットリングネットワーク等を用いて伝送が行なわれています。この 40Gbps リングは、学術実験のために構築したものであり、多数の実験トラフィックやネットワーク研究者の実験用トラフィックが収容されています (図 2)。
- 茨城エリアでは、茨城県庁の行政系ネットワーク (IBBN: 茨城県が中心となって整備した 10Gbps の性能を備えた超高速・大容量の情報通信ネットワーク) を一部お借りして伝送が行なわれています。
※ 茨城エリアでは、行政系ネットワークの他の通信量が増えると、本アクセスポイントの速度が低下する場合もあります。予めご了承ください。 - その他、ソフトイーサの共同研究先組織またはその連携組織で試作中のインフラやネットワーク技術を試験的に利用しています。
図 2: ソフトイーサが学術実験目的で構築した東京 23 区内 40G リングネットワーク等の概要図
ご利用にあたっての注意
- ソフトイーサは、本アクセスポイントに関して、サポートを実施しません。本アクセスポイントに依存をしないようにお願いします。本アクセスポイントが利用できないときは、普段お使いの PPPoE ID とパスワードで ISP に接続してインターネットをご利用ください。
- 本アクセスポイントは、学術実験目的で、無償・無保証で開放しているものです。コロナ期間中は、できるだけ停止しないように努めますが、実験の都合により、いつでも一時停止する可能性があります。
- 無償で一時的に提供しているものですので、問題が発生したときも、一切の補償やサポートはできません。本アクセスポイントが利用できなくなったときは、普段お使いの PPPoE アカウントに切り戻してインターネットを利用してください。
- ネットワークは、全く二重化がなされていません。また、研究開発中のソフトウェア技術を多数用いて構築されています。障害が発生したときは、長期間停止する可能性があります。ただし、ネットワークの多くの部分はソフトイーサの研究開発用のインフラを兼ねていることもあり、できるだけ早く復旧することが見込まれます。
- 現在、両エリア合計で最大約 16,000 ユーザーが PPPoE 接続することが可能ですが、利用可能ユーザー数は、これを下回る可能性もあります。接続ユーザーが増えた場合は、PPPoE 接続に失敗する可能性が高くなります。その場合は、しばらく待ってから再接続してみてください。
- 本アクセスポイントやその技術は、研究中のものであり、本開放施策は、実証実験を進めるためのものです。本アクセスポイントを流れる通信には、本実験の目的 (優先通信の判別の実現のための仕組みの改良、トラブルシューティング、セキュリティの実現等) のため、ソフトイーサおよび秘密保持誓約を行なったソフトイーサに関係する学術実験ネットワーク (OPEN プロジェクト)、共同研究先またはその連携先の研究メンバー等がアクセスし技術検証をする場合があります。また、トラブルシューティング目的のため、パケットヘッダおよび PPPoE 接続・認証ログが記録されています。その場合の記録は、研究およびトラブルシューティングのみを目的としています。ただし、法執行機関等から法令に基づく照会があった場合は、それに応じて、ログファイルが開示される場合があります。
- 本アクセスポイントに接続できない場合は、普段お使いの他 ISP の PPPoE アクセスポイントに接続できるかどうかお試しください。他 ISP には接続できる場合は、お使いの光ファイバ回線の故障ではなく、ソフトイーサが原因の本アクセスポイントの問題ということになります。この場合は、しばらく待ってから再接続してみてください。
- 本アクセスポイントに接続できない場合でも、フレッツ光回線 (NTT 東日本、コラボ各社) のサポートへの、本アクセスポイントに関するお問い合わせはご遠慮ください。
その他 (今後について)
- 本アクセスポイントの開放は、上記の学術実験の実施と、研究の実証実験を目的とした、非営利のものです。
- 本研究で成果・知見が得られた場合は、今後、無償で公開する予定です。
- 本アクセスポイントは、ソフトウェアルータ技術およびオープンソースカーネル (Linux LXD) を用いて構築されており、1 万円程度でリサイクル品が購入可能な x64 サーバーコンピュータ (Xeon X5570 2.93GHz × 2 CPU) わずか 1 台のみと、周辺増設部品 (RAM、NIC、SSD) およびリサイクル品として数万円で購入可能なレイヤ 3 スイッチとが組み合わせて構築されています。これらの構築方法のノウハウ等は、後日、本実験の責任者が関係している共同研究先またはその連携先からまとめて公開しようと予定しております。
- 本アクセスポイントは、ソフトウェアルータ技術およびオープンソースカーネル (Linux LXD) を用いて構築されており、1 万円程度でリサイクル品が購入可能な x64 サーバーコンピュータ (Xeon X5570 2.93GHz × 2 CPU) わずか 1 台のみと、周辺増設部品 (RAM、NIC、SSD) およびリサイクル品として数万円で購入可能なレイヤ 3 スイッチとが組み合わせて構築されています。これらの構築方法のノウハウ等は、後日、本実験の責任者が関係している共同研究先またはその連携先からまとめて公開しようと予定しております。
- 本アクセスポイントは学術実験目的であり、ソフトイーサは、商用・営利目的の PPPoE 型フレッツ用 ISP サービスに参入する予定はありません。
本実験の責任者: 登 大遊